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日本海事産業の国際競争力の向上へ!大阪大学大学院工学研究科に「先進海事システムデザイン共同研究講座」を2025 年4 月に設置

国立大学法人大阪大学
今治造船株式会社
ジャパン マリンユナイテッド株式会社
日本シップヤード株式会社
一般財団法人 日本海事協会
株式会社MTI

■概要
国立大学法人大阪大学(総長:西尾 章治郎/以下、大阪大学)と、今治造船株式会社(代表取締役社長:檜垣幸人/以下、今治造船)、ジャパン マリンユナイテッド株式会社(代表取締役社長:廣瀬崇/以下、JMU)、一般財団法人日本海事協会(会長:坂下広朗/以下、ClassNK)、日本郵船グループの株式会社MTI(代表取締役社長:鈴木英樹/以下、MTI)は、大阪大学大学院工学研究科(大阪府吹田市)に「先進海事システムデザイン共同研究講座、Open Collaboration Laboratory for Enabling Advanced Marine Systems(呼称:阪大OCEANS)」(以下、本共同研究講座)を2025年4 月に開設します。
 また、今治造船とJMUが全ての株式を所有する商船・海洋浮体構造物の営業設計会社である日本シップヤード株式会社(代表取締役社長:檜垣清志/以下、NSY)も本講座と連携して、本講座が進める設計・エンジニアリングに関する研究活動に積極的に参加いたします。
日本海事産業の国際競争力向上に向けて動き出す本共同研究講座の取組に、ぜひご注目ください。

<共同研究講座が開設される大阪大学テクノアライアンス棟>

■共同研究講座設置に至った背景と狙い
現在、世界は、地政学的リスクの重なり合いによる経済安全保障意識の高まり、地球温暖化への対応、AIに代表される新技術の発展による社会経済の大きな変革、先進国における少子高齢化による人手不足問題等、過去にない変革と対応を迫られています。日本の海事産業も、国際的な課題解決のための革新的な機能、優れた環境性能、安全性を備えたライフサイクル価値の高い高性能次世代船舶を迅速に市場に供給するための「ものづくりの大変革」が求められています。

造船・海運・船級をはじめとする海事産業は、四方を海に囲まれた日本にとって、人々の生活を支える海上輸送のための船舶の供給と運用を担う基盤産業です。日本の造船業はその設計・建造技術において世界的に高く評価されています。また、海運業は世界最大の船隊規模と優れた安全・効率的な輸送技術を有しています。さらに、船級協会は第三者機関として海上輸送の安全を支える船級規則の整備や認証業務を行っており、その認証を受けている船舶数は国際的にもトップクラスを誇ります。

本共同研究講座※1は、大阪大学が推進する産学連携プログラム「Industry on Campus」に基づき、日本の海事産業と大阪大学大学院工学研究科が協力し、従来の造船工学における流体や構造の要素に加え、機関、電気、制御システムなど多岐にわたる分野を統合する革新的なシステムズエンジニアリング※2の研究と最新のAI技術の応用・適用による設計の自動化に取り組むと共に、次世代の人材育成の拠点として機能します。

大阪大学大学院工学研究科は、地球総合工学専攻の船舶海洋工学部門を中心に、船舶や海洋構造物の研究において世界トップクラスの成果を挙げています。特に流体力学や構造分野では、国際海事機関(IMO)の安全基準策定等にも貢献し、国際的にも高い評価を得ています。加えて、企業との連携にも力を入れており、船舶海洋部門以外の他部門との連携も視野にいれて学際的かつ先進的な研究が可能となっています。

IMOは、2050年頃までに国際海運におけるGHG排出ネットゼロの達成目標を掲げており、日本の海事産業にはそれを実現するための大きな役割が期待されています。燃料転換や自動化技術の進展に伴い、設計・建造、認証、運用プロセスが複雑化する中で、AIなどの最新技術を活用した革新的なシステムズエンジニアリング、それによる自動設計が課題解決の鍵となり、日本海事産業の国際競争力向上に貢献します。

本共同研究講座は、世界に冠たる日本の造船・海運・船級をはじめとする海事産業クラスターの強みを活かし、国際競争力強化のため、産学連携をさらに深化させ、世界トップレベルの研究と人材育成に取り組み、世界の海事産業をリードする研究・教育拠点になることを目指します。

共同研究講座概要
講座名:先進海事システムデザイン共同研究講座
英語名:Open Collaboration Laboratory for Enabling Advanced Marine Systems
呼称:阪大OCEANS
設置期間:2025 年4 月1 日~2030 年3 月31 日 (5 年間)
設置場所:大阪大学テクノアライアンス棟

研究体制(2025 年4 月1 日)
・常勤教員 特任准教授(常勤)(現在、選任中)、特任助教(常勤)(現在、選任中)
・兼任教員 牧敦生 教授、飯島一博 教授、箕浦宗彦 教授、大沢直樹 教授、辰巳晃 准教授、酒井政宏 
      准教授、武内崇晃 助教 (以上、所属:大阪大学大学院工学研究科)
・招へい教員 招へい教授(現在、選任中)、招へい准教授(現在、選任中)
・参加企業 研究員 各社より計10名程度

■活動内容
1.革新的なシステムズエンジニアリングと自動設計に関する基盤研究
 A)安定的な海上輸送を支えるサプライチェーンの強靭化に関する研究
 B)船舶の基本設計・機能設計と認証におけるAI活用に関する研究
 C)船舶の生産設計とデジタルシップヤードに関する研究
 D)船舶の運航・保守とデジタル・ツインに関する研究
2.船舶の設計・建造・運用、認証に関する個別研究(オープン型研究、クローズ型研究)
3.次世代の海事産業を支える人材育成

今後の予定
本年7月9日(水)13時から、大阪大学・吹田キャンパスMOホールにて共同研究講座開設記念シンポジウムを開催予定です。プログラム・申し込み手続き等の詳細は本年4月に改めてご案内する予定です。

用語解説
※1 共同研究講座
大阪大学では、企業と大学が融合する新しい教育・研究体制を進めています。特に工学研究科は、「Industry on Campus」のもと、多くの企業との連携を深めてきました。大阪の地域社会や地場産業と共に発展し、財界からの支援により誕生した背景があります。産業界のニーズに応じて実学的な伝統を築き、産業界との強いつながりを持つことが、工学研究科の大きな特徴です。

※2 システムズエンジニアリング
このような歴史を受けて、2006年に共同研究講座制度が創設され、大学キャンパス内で産業界と大学の人的交流を促進する活動「Industry on Campus」が始まりました。現在、この言葉は大阪大学の産学連携の象徴となっています。
(参考)共同研究講座一覧:https://liaison-office.eng.osaka-u.ac.jp/labs01/

■問い合わせ先
(共同研究講座での研究等の取組に関すること)
大阪大学大学院工学研究科 教授 牧敦生(まき あつお)
E-mail:maki@naoe.eng.osaka-u.ac.jp

(報道に関すること)
大阪大学 工学研究科 総務課 評価・広報係
TEL:06-6879-7231 FAX:06-6879-7210
E-mail: kou-soumu-hyoukakouhou@office.osaka-u.ac.jp