2024年7月23日(火)に行いました当社記者会見の概要をお伝え致します。
①2023年度の回顧と、2024年度の展望について
2023年度は、アフターコロナによる物流の増加、船価の高止まり、ドル金利の高止まりから用船案件での受注或いは地元船主向けの受注が多かった印象がします。その中で、日本シップヤード発足後、最初の共同設計船として世界最大級の24,000TEU型コンテナ船を今治造船で4隻、JMUで2隻竣工したこと、また同船がシップオブザイヤー2023に輝いたことが一番の思い出になりました。そして、2023年度の竣工量は69隻、357万総トン(ばら積み貨物船57隻、コンテナ船10隻、自動車運搬船2隻)になりました。
2024年度も、ウクライナ戦争、イスラエル問題が引続き地政学リスクを助長させ、海運マーケットは好調を維持しており、人手不足による建造量の伸び悩みから新造船マーケットは先物受注が進むとみられます。
②新造船マーケットの現状と見通し
2023年度は、日本シップヤードを通じて92隻、490万総トンの受注を獲得し約3.7年分の工事量を確保しました。
特にエバーグリーン向けにメタノール2元燃料の16,000TEU型コンテナ船8隻の受注、川崎汽船向け92,000DWT型バルカー3隻の受注を果たすことができました。このように新燃料船及び最新鋭のエコシップ開発に邁進していきたいと思っています。
先日のポシドニア海事展期間中に欧州訪問しましたが、オペレーター及び船主はマーケットの活況によりかなりの発注を進めたのではないかと思っています。この状況は年末にかけて続くように思います。
アメリカ大統領選の結果によっては海運マーケットも変わるかもしれませんが、大きくはブレないと思っています。
③業績見通しと経営課題について
昨年度の売上げは、4,431億円と増収増益となりました。
今年度も鋼材の高止まりと資機材・人件費のアップが収益を圧迫してきますが、この円安が続いてくれれば、それを相殺して増益に向かうものと思料しています。
経営課題としては人手不足で生産を上げられない状況が続いていますで、初任給を含めた賃上げの実施、業績連動による賞与支給制度の採用等で人員増員を図っていきます。
④競争力強化対策の取り組み方針について
当社では、2024年1月1日に経営企画本部配下に設計システム開発グループおよびDX推進室と人事総務本部に広報室を新設しました。システム部門を経営企画本部に集約し、まずは社員業務の負荷低減及び効率化をテーマに会社としてDXを推進することで、今後加速する人材不足の解消に努めます。
また広報室を通じ造船業及び当社の認知度向上、イメージアップにつながる取り組みを行い、人材確保に努めていきたいと考えています。
⑤設備投資の実施計画・進捗状況について
生産設備は、丸亀工場の艤装岸壁強化を行いLNG燃料焚き自動車運搬船を連続建造中で、今後さらに代替燃料船の建造比率が高まることを見据え、艤装岸壁強化等の設備投資を検討中です。
また、アンモニア燃料タンクやLCO2タンクの内製化含む調達方法について検討中です。
福利厚生に関しては、昨年発表した丸亀工場工作オフィスは来年1月に完成予定です。
今後も丸亀設計・事務所向け新社屋をはじめ、今治造船グループ各拠点の事務所を順次立て替えていくことを検討しております。
⑥技術開発、新製品開発への取り組みについて
どの燃料が今後主流となるのか業界としては手探りの状況ではありますが、当社では、LNG燃料船として大型ばら積み貨物船や自動車運搬船を建造中であり、メタノール燃料船については大型コンテナ船や大型ばら積み貨物船の受注を積み重ねました。アンモニア燃料船についても大型ばら積み貨物船の実証に向けて設計検討段階となっております。
また、新しい船種として三菱造船殿と提携した液化CO2運搬船は設計作業を進めており、現在は三菱造船殿、三菱商事殿、三井物産殿とともに船型・仕様の標準化や普及に向けて取り組みを始めております。一方で、代替燃料船建造による設計負荷の増大や将来の日本における労働人口の減少に伴い、今後設計人員不足が課題になってきます。
当社では、引続き人員確保を進めることに加えて、設計情報や設計ノウハウのデータベース化、設計のフロントローディングの取組み、設計作業の効率化を通じ、設計人員不足解消に向けて取り組みを継続していきます。
⑦人員規模について
今年度は79名の新入社員が入社して人員規模は1,891名となり、全社員の平均年齢は37.4歳となっており、来年は120名程度の採用を予定しています。
⑧韓国・中国の造船業の動向について
中国の造船業は、建設関係から人手が流入しているのか、建造量において世界シェア47%を占めるようになりました。しかも、LNG運搬船やLNG燃料自動車運搬船も建造するようになり、技術開発、生産規模において韓国、中国に後れを取る状況になっています。日本の造船業・舶用工業もお互いに協業して新燃料対応した船型開発に取り組むべきであると考えます。