2009年7月15日(水) に行われました、当社社長共同記者発表の概要をお伝え致します。
1.足元のマーケットの状況について
弊社も昨秋以降、マーケットの激変により受注は更新できていない。船主殿はとても発注する気になれないのが本音だろうと思います。ただ、足元のバルカーマーケットは回復してきているので、金融環境が落ち着き、造船所のコスト低減次第ではどこかで折り合う船価が出てくるのではないかと思っています。それでも今年の年末か来年前半までは際立った動きは出てこないと思われます。バルカー以外の船型はしばらく期待できないでしょう。
2.今後の新造船マーケットの見通しについて
バルカーにおいて少しは発注が出てくるのではないかと思いますが、他の船型においてはしばらく期待できないでしょう。当社は2013年半ばまでの仕事量を確保しており、今は様子見をすることができますが、今後は新規需要を生むような新船型の開発も必要であると思います。
3.2008年度の業績について
建造実績は、バラ積み貨物船53隻、コンテナ船19隻、PCC8隻、VLCC2隻、LNG船1隻、チップ船3隻、フェリー1隻の前年度より3隻多い、計87隻を竣工し、約380万総トン、540万DWTでした。受注量は45隻。09年6月末現在の受注残は約400隻で、船種としてはバルカーが多い。売上高は、2008年度から工事進行基準を採用したこともあり、4,772億円(前期3,960億円)と過去最高を記録したものの、鋼材の急激な値上げ、リーマンショック後の為替の円高及び工事損失引当金の計上により営業利益は半減しました。役職員一丸となってコストの低減を図っているところです。
4.2009年度の業績の見通しについて
船型がスモールハンディ等の小型船建造が増えるため今期の建造隻数は100隻近くの建造を予定していますが、売上げは前期並みであると思います。収益のほうは前期に工事損失引当金を計上していることと、資材を含めたコストの見直しをしているため好転するものと予想されますが、為替が95円以上の円高になると厳しい。受注量においては前述したように年末頃から新規受注を期待しているところですが、コストの見極めができていない以上、当社から積極的に受注することはありません。
5.今後の対応について
中国造船業の建造能力拡大による供給過剰懸念は確かにあります。しかしながら、造船経営で利益を出すことは非常に難しいものです。今回の5年間続いた海運市況の高騰でも造船業界は資機材の高騰のあおりを受けて余り潤っていません。利益を出している造船会社は世界的に見ても非常に少ない。新興造船所はいずれ累積赤字で撤退していくと思います。我々は、赤字を出さない経営をする自信はあります。
日本は、オペレーター、船主殿、造船所、舶用メーカー、ファイナンサー、商社など全て自国で調達できる世界でも類を見ない海事立国です。この連携を強固にしてお互いに協力し合って企業連合を造り上げれば生き残っていけると思います。弊社は「より良い船づくり」に邁進するしかありません。それを認めてくれる船主殿、オペレーター及び舶用関連企業と共に仕事をすれば良いと考えています。その為に今は足元を固める時期であり、その体制づくりをしないと明日の今治造船はないと考えています。
弊社はあらゆる船種船型に対応するのが基本方針であり、今のように全ての船種が悪い時代は、何年も続かないと考えています。70年代の自動車船、80年代後半のコンテナ船、90 年台前半の電力炭運搬船のように、時代ごとに流行する船は必ず登場します。常にアンテナをはり、設計のリードタイムを短縮して、需要が回復すれば誰よりも早く動けるような体制をつくります。また、生産は常に右肩上がりが正しいとは思いません。マーケットの状況に応じて建造量をフレキシブルに増減できないと生き残れないと考えています。
「船主とともに伸びる」という企業理念のもと、当社の顧客はリピーターが多く80%が地元船主殿はじめ国内船主殿です。そのため造船契約迄に傭船契約、ファイナンスが決まっているので目立ったキャンセルの動きはありません。一部海外のオペレーターとの契約もありますが、大きなデフォルトがない以上キャンセルの要請はありません。
他国に価格競争で対抗するのも1つの手ですが、故障が発生しない船主殿が喜ぶ良い船を造ること、素早いアフターケアなどが重要です。また、同じ船型を造り続けることも船主殿へのサービスになります。当社は今年3月で、28,000DWT型バルカーが累計100隻を超えています。
昨年秋以降、新規の設備投資は止めています。また昨年11月以降現場の増員も図っていません。船型にもよりますが年間の建造量は90隻前後が筋肉質で適当ではないかと思っており、それも建造コストとマーケットの状況によります。
今後は人材育成や設計のソフト、研究開発に注力していかなければなりません。人材については、ここ10年間の採用により平均年齢が33.5歳と若返っているので、今後は人材の育成が重要であります。昨年は大阪府立大学との共同研究、今年4月からは愛媛大学大学院の寄附講座がスタートしました。当社は厳しい国際競争の中、地場産業として生き残る事が使命であると考えており、地元における造船ステイタスをあげる意味でも産学連携の強化は重要であり、学生のユニークな発想も受け入れて行きます。