2016年7月11日(月) に行われました、当社社長記者会見の概要をお伝え致します。
- 2015年度の回顧と2016年度の展望について
2015年の夏以降バルカーのマーケットはケープサイズを中心に回復の兆しが見られたが、9月に国内オペレーターの経営破綻等により
下落に転じてしまい、今年に入っても海外オペレーターの経営破綻或いは用船料の突然の減額要請等でマーケットはさらに悪化した。
国内造船所は何とか円安に助けられたが、オペレーターの経営難による解約要請や納期延長要請が相次いだ非常に厳しい年度であった。
2015年度は91隻450万GT(ばら積み船83隻、PCC2隻、コンテナ船6隻、753万Dwt)の船舶を引き渡すことができた。
売上げは3,747億円と1%の減収となった。利益は円安に恵まれて増益となった。
今期は艤装期間の長いLNG船や大型コンテナ船の建造が始まるので、年間建造量は減少に転じる。
- 新造船マーケットの現状と見通し
昨年度はマーケットが低迷する中においてもコンテナ船15隻を含めた44隻の受注を果し、2019年半ばまでの仕事量を確保することができた。今年のマーケットは底をついた感じがしているものの、当面、低迷したマーケットが続くとみており、
新造船受注はあまり取れないものと予想している。 こういうときは深追いせず、マーケットの回復を待つことが先決である。
来年以降はマーケットが回復することを祈りたい。
- 船舶部門の業績見通しと経営課題について
今年度は西条工場ではLNG船の建造が本格化しており、各工場では新たに船型開発した63BC、182BC、207BCの竣工が相次ぐ。
また、西条工場、丸亀工場では世界最大級の20,000TEU型コンテナ船の建造が始まる。本年は鋼船建造60周年、
2,370隻を越える実績と経験を糧にこれらの船を確実に仕上げて、飛躍の年にしていきたい。
しかしながら、今年に入ってからの円高は非常に頭が痛い。今年度はいくらか為替予約ができているが、
来期は非常に厳しい収支が予想される。コストダウンを図りながら為替の回復を期待したい。
- 競争力強化対策の取り組み方針について
将来の船型や省エネ付加物の開発を見据え、丸亀工場に本格的な曳航試験水槽、耐航性試験水槽の建設に着手する。
マーケットの変動が激しい中、新船型開発におけるリードタイムを縮めて短納期船などのニーズにタイムリー且つ柔軟に対応しなければ、
世界の競争に打ち勝つことができない。丸亀の新ドック完成を以て建造設備への設備投資は一段落した。
今後はハード面ではなく、ソフト面での開発に注力して行きたい。
- 設備投資の実績計画・進捗状況について
2015年度は丸亀工場、広島工場にて組立工場を建設した。また、広島工場に1,200Tゴライアスクレーンを新設した。
今年9月に丸亀新ドックに日本最大の吊り能力を持つ1,330Tゴライアスクレーン1号機が据え付けられ、引き続き2号機、3号機も据え付ける。
また、周辺設備も順調に建設が進んでいる。
- 技術開発、新製品開発への取り組みについて
NOx3次規制、HCSRなど最新の国際ルールに適応した各種バルカー、タンカーの開発を行っている。
日本最大の14,000TEU型コンテナ船がシップオブザイヤー2015「大型貨物船部門賞」を受賞した。
また、7,000台積み幅広PCCも3隻竣工し、両船型ともに計画通りの性能が確認された。
本年3月に竣工した84BCにSOxスクラバーを搭載し、各種データの収集を行っている。
また、バラスト水処理装置のレトロフィット対応について、順次図面作成と実船施工を行っている。
- 船舶部門の人員規模(現行、新規採用状況等)
今年度は136名が入社し、1,547名となり、全社員の平均年齢は33.9歳となっている。来年度も90名程度の採用を計画している。
- 韓国、中国の造船業の動向に関する意見
無計画な設備増強、生産規模拡大が自ら不況を招いたと認識できたのではないかと思う。
造船業はそんなに稼げる産業ではない。非常に市況の変動に左右される業界である。
コストも決まっていないのに、またそれを無視して数年後の船価を決めていくようなリスクを取っているわりにリターンが少ない業界である。
早くそれに気づいて撤退するか、他の業態に変換するべきと思う。我々造船専業メーカーですら生き残りをかけて必死に頑張っている。
国策として施行される大規模な再建支援や発注支援などは、海運・造船市況回復の足枷になると懸念される。
出来るだけ自然な市場原理に委ねられた造船業の健全な淘汰を望む。
以上