2010年7月21日(水) に行われました、当社社長共同記者発表の概要をお伝え致します。
1.2009年度の回顧と2010年度の展望について
昨年度は創業以来最高の101隻(442万GT、709万DWT)竣工して4,832億円の売上げを計上し(昨年は87隻、380万GT、4,773億円)、昨年度より増収増益を確保しました。
ばら積み船63隻、コンテナ船14隻、PCC7隻、VLCC4隻、プロダクト船10隻、LNG船1隻、チップ船2隻と船型も多岐に渡っています。
2009年度は鋼材の値下がりと為替の予約が功を奏して増益になりました。2010年度は再度の鋼材値上げ要請と円高で収益的には厳しいものがありますが、計画通りの利益は確保したいと考えています。
尚、今年度は96隻の建造を予定しています。
2.新造船・修繕船マーケットの現状と見通し
新造船は今年入ってから底堅いバルカーのマーケットを反映して引合いが増え、1月から6月までの半年間で60隻余りを受注しました。特に4月以降は国内外ともに新造調達再開の機運を受け、相当量のバルカーを受注し、これで2013年末までの仕事量を確保しました。 最近のバルカーのマーケットの下落で引合いは減少し、各造船所も様子見に入ると思います。
一方、修繕船は当グループでは新笠戸ドックのみの営業ですが、今のところリピーターが多く、安定して操業できています。
3.業績見通しと今後の経営課題について
前述したように造船所の業績は鋼材の値段や為替レートの変動に一番大きく左右される業界であり、その意味で今の90円を切る円高では韓国、中国の造船所と価格的に勝てる要素が少ないですが、今我々は2012年から2014年納期の受注をしており、その頃には少しでも円安・ウォン高・元高に戻ってくれる事を期待しています。
長期安定輸送手段である船舶が安いだけで選ばれるとは限りません。燃費のいい、トラブルの少ない、環境に優しい船を造れば、それに見合うプレミアを払う船主がいると信じています。
4.競争力強化への取り組みについて
今年はCSR適用の180BC、95BC、61BCが随時竣工していきますが、全て3D設計で仕上げました。これによって手戻り工事の撲滅、標準工作方法の充実、スクラップ率の低減を図っていきます。
当然のことながら、コスト意識を持った社員教育の徹底、舶用メーカーと共同でコスト削減の協議を重ねる事も重要であり、コスト低減への地道な努力が肝要と思います。
5.設備投資計画について
主な設備投資としては、PSPC対応型の塗装工場を今年度は西条東ひうち工場に、来年度は幸陽船渠と丸亀工場に設置する計画を立てています。その後は設備の更新程度で大きなものは考えていません。
6.研究開発への取り組みについて
・ハイブリッドフィン(自社開発)
2007年竣工の低速肥大船(205BC、180BC、88BC、47PC)から実船装備し、約3~6%の省エネ率を確認しており、順次、標準装備として展開していきます。
・省エネ型船底塗料
日本ペイントマリン製品を新造船としては初めて採用し、28BCの試運転状態で約4%の省エネ率を確認しました。引き続き、2011年初めに高速船(PCC)でも実船検証を行う予定です。また中国ペイントの新製品でも同様に、28BCで実船検証を行う予定です。
・空気潤滑法(マイクロバブル)
国交省・日本財団・NKから補助金を頂いたGHG削減検証プロジェクトで、一般商船の船型として初めて新造船の28BCに装備しました。試運転においてバラスト状態で、約8%の省エネ効果を確認できました。
・太陽光発電と風力発電について
現在研究中ではありますが、船内電力の2%強を賄えられる太陽光発電と風力発電の可能性について、来年竣工予定のPCCで検証を予定しています。
・船陸間通信装置(IBSS)
2008年末より渦潮電機と共同開発している船陸間通信システム(IBSS)は、乗組員の手を煩わせることなく、本船の運航状態が陸上で監視できるシステムで、2009年10月より希望される船主さんに提供を開始しました。
7.人員体制と採用計画について
当社の従業員は現在1,054人。その内20代が440人(平均年齢36.2歳)と若い人材が増えてきており、来年も今治造船で35名、グループで60名程度の採用を計画しています。
8.韓国・中国の造船業をどう見るか
技術力、生産量ともに日本を追越した韓国造船業と世界第2位の生産量になった中国造船業と今後の受注競争をしていくには非常に厳しいものを感じていますが、造船業は運賃マーケットの変動により船価、為替、資材の価格が著しく変動する産業であり、このような変動要因の中で儲けることは非常に難しいと考えています。確かに雇用の意味では重要でありますが、国営会社がいつまでも赤字経営を続けられるものなのか疑問に思っています。
長期安定輸送の一翼を担う船舶が品質のいい燃費のいいもの(本物)を造って、それに相応する対価を払えるような業界にしていきたいと思っています。
以上