今治造船株式会社は、100年を超える歴史の中で数多くの用途・サイズに対応した船型の開発を手掛け、2,000隻に近い船舶を建造し、お客様のニーズに応えてきました。
船舶に求められる性能は常に社会情勢に左右され、設計の改善、新技術の導入を行ってきましたが、昨今では特に歴史的な燃料油価格の高騰を背景に、燃費性能の向上、省エネによる環境負荷の低減が求められています。
そのような情勢を踏まえ、今治造船は、幅広船型でありながら燃費性能の大幅な向上を図った浅喫水汎用バルカーを開発し、今月、友好船主殿向けに2隻の契約を行いました。
2年程前に、友好船主殿から、「近年の大型パナマックスバルカーは載貨重量を大きくした為にどうしても喫水が深くなっているが、世界の港湾の約70%は喫水制限が14m以下であることを踏まえ、浅喫水で載貨重量8万トンを積載出来、且つ、低燃費の船型を開発して欲しい」との要望を受け、その後、荷主殿、国内外オペレーター殿等のご意見を取り入れ、検討を重ねた結果、全長229メートル、船幅を35メートルとして、約13.9メートル(45.6フィート)の喫水にて載貨重量8万トンを確保することが可能な幅広浅喫水省エネ船型を開発しました。
船幅を広げたことにより船倉容積が増大、従来のパナマックスバルカーと比べて、穀物等比重の軽い貨物を浅喫水で大量に積むことが出来、より多くの港へより多くの貨物を運ぶことが可能となり、更にハッチ開口幅を広げたことで荷役効率も高めています。
また本船は、満載喫水にて載貨重量8万4千トンまで積むことが出来、穀物等の軽貨物から石炭の積載、更には鉄鉱石の隔倉積みまで多彩な貨物、積み付け等、柔軟に対応出来る高い汎用性を備えた船型となっています。
船型の大型化や載貨重量の増加にも関わらず、今治造船独自開発の「HYBRID FIN」を装備することによる推進効率向上に加えて、各種省エネ技術の採用により、航海速力14.5ノットで1日当たりの燃料消費量が約28トンという優れた低燃費性能を実現しました。
CO2排出量に換算すると、従来のパナマックスバルカーと比して年間約1,800トン削減(約7%の削減率)に相当し、更にEEDIではリファレンスラインを約25%下回り、2020年以降の竣工船に適用予定となるPhase 2の規制値を満足する環境性能の高い船型となっています。
第1船の竣工は2014年秋頃を予定しており、同年の新パナマ運河完工後は通航も可能となり、運航面においてもより汎用性が高まります。
今治造船では、ポスト・パナマックス船型として、95型「”IS” NEXTER」、88型石炭専用船を既に商品化していますが、今回の浅喫水80型の開発により、これまで以上にお客様の用途・ニーズに柔軟に対応出来る商品ラインナップが実現しました。